仕事

4/4
前へ
/36ページ
次へ
稲光五郎はじっくりと、左手を裏返したり、撫でたりしながら観察した。それだけで、10分はかかったと思われる。 指先がゆっくりと熱を帯びてきたころ、綺麗に畳んだフクサでもそっと置くように、左手を元に戻した。 すると、白い瞳もゆっくりと瞼の奥へと戻っていく。 出会った頃の、稲光五郎がそこにいた。 ───ようございます。明日、もう一度同じ時間にいらしてください。 ───その頃には、アータに似合いのドアノブを差し上げましょ。 ───?どうしてドアノブ屋なのかって? ───フフフ、焦らず明日をお待ちなさいよ。はい、さようなら。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加