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稲光五郎はじっくりと、左手を裏返したり、撫でたりしながら観察した。それだけで、10分はかかったと思われる。
指先がゆっくりと熱を帯びてきたころ、綺麗に畳んだフクサでもそっと置くように、左手を元に戻した。
すると、白い瞳もゆっくりと瞼の奥へと戻っていく。
出会った頃の、稲光五郎がそこにいた。
───ようございます。明日、もう一度同じ時間にいらしてください。
───その頃には、アータに似合いのドアノブを差し上げましょ。
───?どうしてドアノブ屋なのかって?
───フフフ、焦らず明日をお待ちなさいよ。はい、さようなら。
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