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翌日は生憎の雨だった。
灰色の雲が街を象徴する電波塔の先をすっかり飲み込んでしまっている。
足元の安物シューズは既に、空と同じように灰色になって、踏みしめる度にぐしょぐしょと情けない音を出していた。
雨を凌ぐための、骨が曲がってイビツになった黒い傘で体を隠すようにして歩を進める。
そうして再び訪れたドアノブ屋は、昨日と何ら変わらず、そこにあった。
───ああ、いらしたね。ずいぶんとお濡れになったようで。
───見えないだろうって?フフフ、それだけグジュグジュと、濡れた雑巾みたいな音をたてていれば、見えずとも……フフフ、雑巾はいけなかったかねぇ、フフフ……
───お上がりなさい。ああ、そのままで構いませんよ。小綺麗な場所であるまいに。何か拭くものも持ってきやしょうかねぇ。
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