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その奇妙な店は……奇妙なと言っても見た目は至って普通の駄菓子屋だ。
駅に通じる表通りから、何本か裏に入った狭い路地にそれはある。
所々穴の開いた看板に、剥げかかったペンキで、「ドアノブ屋」と書いてあった。
黄ばんだサッシのガラス引き戸は、13時頃に開けられる。しかし、いつ行っても電灯はつかない。
店先に懐かしい駄菓子たちが並び、その奥にある襖が少しだけ開いている。
そこから漏れでる光だけが、店内を照らしていた。
雨の日等はとてもじゃないが、何がどこにあるかわからない。
なので、客もいるのかいないのか謎だし、そもそも店かどうかさえ怪しい。
しかし、ここは歴とした商店なのだ。
───オヤ、イヤですよ。それは売り物じゃありません。
───アタシ?店主の稲光五郎です。そこの菓子はアタシの大好物でねぇ……お分けするわけにはいかないんですよ。
───ライターさん?取材?……そういやぁ、さっきから某か一人でしゃべってらした。フフ、最初は変なお人がいらしたもんだと、不思議に思ってたんですよ。ライターさんなら、合点てもんですね。
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