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少し遅めの朝で、目が覚める。
時刻は、午前11時。
…少し寝過ぎたか。
インスタントコーヒーを作って啜れば、苦みが一気に口の中から脳まで届いて、ぼやけていた思考が冴えてくる。
そうだ。
昨夜彼氏が泊まりに来ていたんだった。
私の隣の布団で、今もまだ高いびきで寝入っている男の人。
今年の1月から付き合い始めた、人生で数人目の彼氏。
名前は、
「由紀人(ゆきと)、起きて。もうすぐお昼になっちゃうよ」
「う~ん…」
由紀人は、寝返りを打ちながら反応して、また眠る。
いつものことだ。
朝食を作る音が聞こえてきても、起きない時すらある。
…あなたより私の方が、長い時間仕事をしてるのに、
おかしな話ですね。
そう思いはするが、口にはしない。
今の関係を壊したくはないから。
「琴~…今何時?」
やっと起きてきた由紀人は、そう尋ねながらケータイを開くと
「やばっ、もう11時過ぎてるじゃん!起こしてよ~!!」
がくっと項垂れつつ、煙草をカバンから取り出して火をつける。
「起こしたけど起きなかったよ。いつものことじゃん?」
「え~記憶にないんだけど~ まぁいいや、行ってくる!」
こっちの気持ちも考えないで好き勝手言いやがって…
とイラつくことはもちろんだが、それを言おうとした時に、
彼はもう隣にはいない。
慌ただしく「いってきます」と声が聞こえて、玄関が閉まる音がした。
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