第一章 -隣にいて-

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少し遅めの朝で、目が覚める。 時刻は、午前11時。 …少し寝過ぎたか。 インスタントコーヒーを作って啜れば、苦みが一気に口の中から脳まで届いて、ぼやけていた思考が冴えてくる。 そうだ。 昨夜彼氏が泊まりに来ていたんだった。 私の隣の布団で、今もまだ高いびきで寝入っている男の人。 今年の1月から付き合い始めた、人生で数人目の彼氏。 名前は、 「由紀人(ゆきと)、起きて。もうすぐお昼になっちゃうよ」 「う~ん…」 由紀人は、寝返りを打ちながら反応して、また眠る。 いつものことだ。 朝食を作る音が聞こえてきても、起きない時すらある。 …あなたより私の方が、長い時間仕事をしてるのに、 おかしな話ですね。 そう思いはするが、口にはしない。 今の関係を壊したくはないから。 「琴~…今何時?」 やっと起きてきた由紀人は、そう尋ねながらケータイを開くと 「やばっ、もう11時過ぎてるじゃん!起こしてよ~!!」 がくっと項垂れつつ、煙草をカバンから取り出して火をつける。 「起こしたけど起きなかったよ。いつものことじゃん?」 「え~記憶にないんだけど~ まぁいいや、行ってくる!」 こっちの気持ちも考えないで好き勝手言いやがって… とイラつくことはもちろんだが、それを言おうとした時に、 彼はもう隣にはいない。 慌ただしく「いってきます」と声が聞こえて、玄関が閉まる音がした。
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