第一章 -隣にいて-

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答え。 「普通」 「嫌だ」 「ふ~ん」 ほぼその3つの単語しか、返事として繰り出されないからだ。 「ごちそうさま~」 私より早く食べ終えた由紀人は、机から少し離れてケータイを見る。 LINEの返事をしたり、ゲームを始めたり。 そしてその後の行動は、よく知っている。 ソファに横になるか、布団に横になるか。 「はぁ… やってらんねぇ~」 「バカみたい… ごちそうさま」 由紀人の言葉に対して、一言だけ。 たった一言呟いた私は、食器を全て片付けた後、洋服箪笥から服を取り出して、 そのままキャリーバッグに詰める。 もう、辛い。 至れり尽くせりの環境にいるはずなのに、「やってらんない」 その一言が、私の堪忍袋の緒を切った。 「え、何?今からどっか旅行でも出かける気?」 私の方をちら見して、低い声で言う由紀人。 すぐにケータイに視線が戻ったのを確認して、 返事もせずに荷物をまとめる。 洋服、洗面用品、化粧品。 通帳、印鑑、免許証。 ある程度の必要最低限をカバンに詰めて、 車のカギや財布といったものを手持ちのカバンで持って、 由紀人の横に立った。
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