第一章 -隣にいて-

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「由紀人」 「はい?」 「私、出て行くね。この家解約することにした。由紀人とも別れるから。」 「え……何、どういうこと?」 「…。別れる。さよなら。どうしてか知りたければ自分の胸に聞いてみなよ」 由紀人の大きい目が、さらに見開かれる。 そんなことを言われると思っていなかったらしい。 「え、何で突然そんなこと言い出すわけ?俺が悪いの?」 「そう思いたくないなら勝手にすれば?とにかく、さよなら」 溢れ出そうになる涙をぐっと堪えて、 由紀人の制止を振り払って車に乗る。 車の外で、まるでこの世の終わりのような顔をする由紀人。 きっと、いつもの私もあんな顔をしていたんだろう。 何か外で喋っているので、指が入るくらいの隙間だけ 窓を開けてみる。 「待てって言ってんのが聞こえねぇのかよ!?」 「何?」 「…なぁ、俺が悪いなら直すからさ?別れるとか言うなよ… 俺はどこに帰ればいいんだよ?」 「実家に帰れば?」 由紀人が実家にいる自分の父と不仲なのは知っている。 家にいれば、月に一回のペースで大喧嘩だそうだ。 が、もうそんなことは知らない。 だって、この人はもう彼氏ではないのだから。
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