第1章 昭環43年 嵐の夜……

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 時は昭環43年。猛烈な豪雨の中、俺はトヨタ・ダイナのステアリングを冷や汗をたらしながら力強く握り締めていた。気の抜けない山道が続いていることと、斜面から噴出す鉄砲水が崖の崩落の予兆を示していたからだ。  大粒の雨が容赦なくフロントガラスを破らんばかりに叩いていた。時折、車体上部から流れてくる雨水がフロントガラスを覆い視界をさらに悪化させていた。  このトヨタ・ダイナの後方にはダイハツ・ハイゼットの初期型がワイヤーで連結されている。カーブでいつ何かしら障害物に激突してもおかしくないが、不思議と事故には至っていない。
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