第1章 昭環43年 嵐の夜……

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 嵐は俺の心を急きたてていた。積荷も心配だ。ハイゼットの荷台に積まれているのは、缶詰製造機、そして先ほど軍需工場でさらってきた工員たちである。    作業員たちが工員をせっせと缶詰にしている。時折、運悪く目覚めた工員が逃げ出そうとして作業員たちと揉みあっているようだった。 「瀬戸さーん。これ、っぱねえっすよ」  作業員の中でリーダー格に当たる峯崎の声が無線機のスピーカー越しに聞こえてきた。奴が頻繁に口走る「っぱねえ」という言葉が気に入らなかった。
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