第2章 昭環42年 嵐の夜に……

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 脱走前夜。分厚いコンクリートの壁に覆われているこの軍需工場には、ほとんど窓がなく空気の循環は蜘蛛の巣のように張り巡らされているエアダクトによって行われている。このエアダクトが共鳴するかのごとく工場内のベルの音を増幅させていた。  軍需工場の工員の朝は早い。午前5時30分に起床のベルが寮全体に、まるで空襲警報かのように鳴り響く。俺は部屋をでると洗面台のところで顔を洗った。  そしていつもの様に午前6時から午後9時まで、ぶっ通しでライン作業をこなす。この軍需工場の工員たちの目は死んでいる。しかも月に数名は事故で死傷者がでる有り様だ。
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