第2章 昭環42年 嵐の夜に……

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 政府は第二次世界大戦に勝利したと言っているが、俺から言わせればトントンな結果だろう。  ここにいる連中は戦争時の大本営の無茶な作戦で、親や親族をなくした行き場のない者がほとんどだ。或いは、孤児であったり貧困層であったり前科者であったりちょっと頭がおかしい──何か事情を抱えている者が大半だ。  実を言うと俺も孤児で帰るところがない人間だ。施設はもうなくなったし、高校卒業後はずっとこの工場で働いている。いずれにせよ、ここで働くしかない。
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