第2章 昭環42年 嵐の夜に……

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 軍需工員の休日。シャバの工員ならば歓楽街へ凱旋というところだろうが、この閉鎖された軍需工場では外界に出ることすら許されない。湿っぽい寮の中で缶詰状態だ。  そして相部屋の三原は休日になると、事実かどうか疑わしい自慢話を始める──恐らく、この軍需工場の中の工員は誰一人として信じていない。    しかし、矛盾するところを突付くと烈火のごとく癇癪を起こすので、誰もが適当に相槌を打つ程度だった。 「俺はさあ、3億円の資産があるんだよ」
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