スクランブル交差店

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ラドラーと呼ばれた飲み物に口をつける。うん、上手い。レモンで割ったビールかな? 二口目をいただこうとしている中、店員は私にこの店の概要を説明してきた 「ここはスクランブル交差店です。ある人の立たされた大きな岐路に対し、全方向の時間を停止し、その人が望む方向へ自由に横断できるように取り計らい設立されたお店です」 しかしながら、それは決して私の知りうるような店の説明ではない。ハテナマークを乱立させていると、スーツの客が要約してくれた 「要は、生と死の狭間だね。一時的に意識をこの、誰も通らない、時間さえ過ぎない交差点にキープさせて、ゆっくり今後を決めようというシステムのようだ」 「こ、今後ですか?」 イマイチ分かってない私に、今度は小さな女の子が元気に話してきた 「死ぬか生きるか!生きるならどーすんのかってこと!」 はぇ~。なんで? 俺の表情を見てか、やれやれとスーツの客は再び紙に向き合い、ぼそりぼそりと呟く 「礼儀はいいが、察しは悪いね。君は生きるにしても、並大抵に生きることが出来ない状況になっているからここに来たんだよ」 店員は少し落ち込んだ表情で補足をした 「残念ながらあなたは、もし生き返ったとしても、10分も保たずに完全に亡くなります。この10分間はやはり…人生最高の10分間にしたいですもんね?それをどうすべきなのか、一緒に考えましょうよ」 あぁ、やっぱり死んじゃうのか、俺は 俺は静かに、囁くように答える 「いいです。特にもうやり残したこともないので」 それを聞いて店員はおろおろとし始めた 「そ、そんなことは!きっと今、錯乱しているだけですよ!リーンさんも来たときはだいぶ錯乱していらっしゃいましたし!」 すると、サムライと話していた甲冑の女性客がぐるりと向き、指差して店員に反論する 「うっさい!こんなん誰だってこうなるわ!」 そのまま立ち上がり、ズカズカと俺の方へ向かってきて、肩をバンバンと叩く。すっごい痛い 「いいんだいいんだ!のんびりしていけ!ここにいるのなんかみんな未だに悩んでる連中だから!」 「悩んでる…あなたもなんですか?」 リーンと呼ばれたその女性客は腕を組み、うんうんと頷きながら答えた 「そうだ。私も革命で仲間に裏切られ、背中からバッサリだ。生き返ったとしても数時間で呼吸しかしない植物人間に成り代わるらしい」 反応に困る…俯くしか出来なかった
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