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「質問していいですか?」
セルロはこくりと頷く。では遠慮なく
「ここにはあなたたち以外には?」
「いないよ?みんなここに来て、いつかは覚悟を決めて去っていったよ」
「あなた方もいつかはここを離れるんですか?」
「かもしれないねぇ」
「もれなく、みんな死の間際なんですか」
「そうだよ」
セルロは指を差して説明していく
「ジャンは奇襲を受けてお腹を撃たれた。旅人なもんで、周りに人もいなくて救助も期待できない、生き返っても30分で亡くなるコース」
「ニュートンはなんか発作とか?生き返っても1分で亡くなるコース」
「プランクはお年を召したからかな。生き返っても1分で亡くなるコース」
「リーンは言ってたけど、フランス革命の関係で味方だと思ってた人に後ろからバッサリ。その人は直後、他の人に捕らえられてリーンは助けられるんだけど、生き返っても植物人間コース」
「明智は敗走中に竹槍でお腹やられて瀕死。生き返っても間もなく亡くなる。歴史書には、結局介錯してもらったコースって言うから…この中で生き返ることが確定だね」
そして、姿勢を改めてセルロは俺に向き直った
「私はルゥ・セルロ。誰かから階段突き落とされちゃった。生き返ってもまだ助かるんだけど、突き落とした犯人に追い討ちかけられるらしいコース。よろしく!」
あなたが一番バックグラウンドが謎で闇深い。気軽に話しかけるべきではなかったかもしれない
しかし、もう死ぬ間際なんだ。遠慮なく聞いていく
「なるほど。あなたは生き返るつもりですか?」
セルロはうーんと唸る
「生き返りたいな。ワンチャン犯人に勝てるかもだし。でも失敗したら痛いだけなんだよねー」
セルロは周りをきょろきょろと見渡し、それから小声で俺に囁いた
「みんな、ホントは生き返りたいんだよ。死ぬなんてみんなゴメンなの。どうにかしたいって思ってずーっと悩んでるの。君もそうでしょ?」
俺は言葉に詰まる。頷いた方がいいのかな。別にそんなでもないんだ、俺は。いいや、素直に言ってしまおう
「いえ。生き返っても良いことないですし…」
瞬間、ズドンと頭部になにかが飛んできた。明滅した視界に見えるのは、デカい本を持つパード。彼女はわんわんと吠えた
「生きるって凄いことなんですよ!生きていれば0の可能性も0.00001くらいにはなるんです!」
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