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パードは黒板にかっかと本日の議題を書いていく。テーマは"10分で幼なじみに愛を伝えよう!"。いや、愛は別に伝えなくていいんですけども
「一世一代の大勝負!笑って死ぬか、悲しんで死ぬか!それはやはり笑って死にたい!ならば成功させねば、この告白を!」
パチパチと拍手が湧き上がる。だからなんで?告白するなんて言ったっけ?
セルロは俺の膝上に座りながらはいはーいと手をあげる
「やっぱりここはストレートに!"好きです…結婚してください!"って!ヒュー!」
いや10分でどうやって結婚するんだ。あのですね、そもそも好きと言ってもほんのりとした片思いであって、別に告白しないで死んでもなんの悔いもないレベルで
そう言ってやりたいのだが、会議は激流のごとく進んでいく。次はリーンが提案をする
「いやいや、ちょっとは捻った方がいいだろ。"君に捧げる愛の歌、聴いてくれ"ってな感じに」
歌ってる暇あると思ってんの?
パードはしかし、なにも考えずほうほうと黒板にアイデアを書いていく。少しは疑ってほしい。続いて明智がぼそりと物申す
「俳句でも詠んでやれ」
あのね、時代錯誤すぎるの
そもそも俳句とか詠めないし、死ぬ間際の俳句とかそれ辞世の句だし。愛を綴るにはちょっと変だろう。続いてプランクがふむふむと提案する
「あえて告白しないのも大切な手段じゃないかね。成功、失敗問わず死んでしまうんだから、幼なじみにはトラウマとして遺りかねないよ」
本当だよ。しかし、パードはいやいやと否定した
「そうあるべきです。生きとし生ける者、良かれ悪かれ誰かの記憶に残れるように生きるべきですよ。素敵じゃないですか?それだけ強く覚えてもらえるって!」
そうかなぁ。トラウマとして覚えていてほしくはないけれど。しかし、セルロは大賛成した
「そうだね!傷跡遺してやりたいもんね!よーし、じゃあ決めゼリフも印象に残るのにしようよ!」
あぁ。死者の会議は生者抜きだ。死者の理屈だけで進んでいくこの会議に一般常識は通用しないようであった。俺はプランクと目を合わせ、肩をすくめた。プランクはやれやれと微笑み、俺の肩を優しく叩いてくれた
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