『   』

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   君を好きになった。  君を好きになった時の話をしよう。  僕が君を好きになったのは、僕がその感情をどうしようもなく制御できなかったせいだ。  君を見て、『君だ』と思った。  ああ、どうしようもなく『君なんだ』なって。  僕には『君だった』んだ。  絶対の真理で、それはもう、摂理だとさえ思えるんだ。『好き』って感情が、ただ『好き』でしかなく、その『好き』って感情を『好き』にできない。  君を『好き』な理由なんてものを、僕はどんな言葉で、どんな風に説明すれば良いのか分からないんだ。  これは、理由を超越した感情だから。  君を知ったその日、その時、その瞬間の連続から、僕の『好き』が始まった。この『好き』を終わらせたくなんてなくて。  この『好き』に次なんていらない。君を『好き』なら、もうそれ以上なんてなくてもいい。  これ以外、二度と誰かを『好き』にならなくていい。これが、最後の『好き』で構わない。  それが、恋だった。  遠くの君を見るだけで、僕は笑顔になれたし、幸せな気持ちにだってなれた。君の顔を思い出した時の、この気持ちだけでなんだってやれたし、なんにでもなれた。  僕は無敵になれたんだ。  この感情は。  この恋は。  この想いは僕を無敵にしてくれた。  恋は僕を幸せにしてくれる。  この『好き』って感情の、この恋が、この想いが、この衝動一つ一つが、どうしようもなく大切で。幾百、幾千、幾万、幾億の『愛』よりも、ただ『大好き』で。  『好き』のその次も、その上もいらなかったのに。その次も、その上も欲しくなってしまったんだ。  君があいつと楽しそうに帰ってるのを見た時、この『好き』は『痛み』に変わった。涙は止まらなくて。  気持ちが止められなくて。女々しいとか構わなくて。  シャワーを浴びながらわんわん泣いた。  でも、シャワーがどんなに涙を洗い流しても、この傷だけは洗い流してはくれない。  ああ。  ああ。  あああ。  失恋は読んで字の如く。  恋を失う。同じ恋は二度とできないその恋を。  僕はその時、胸からなにかを無くした。  うん。  でも、そうだね。  恋はきっと、失恋のその『痛み』さえも、恋なんだろう。  いつか、いつか。  その『痛み』を穏やかな気持ちで笑えたら、僕はその恋をやっと卒業できるんだ。  
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