温もり

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温もり

「お客様、そう難しいことではないですから。 貴方様が望む女性像をこの店はそのまま再現することができるのです。」 「そんなことできるわけがないでしょ。漫画の世界じゃあるまいし。」 真咲は鼻で笑っていた。 「お客様、人間は出来ないと言っているうちは出来ませんが出来るやれると思った瞬間から不可能だと思ったことが出来るようになるのです。」 老人の自信がこもったその言葉が真咲の心に刺さる。 「お客様はこれまで愛されてきたことがないでしょう。この店は愛に飢えている人にしか見えないんですよ。」 真咲の心臓がドクッと脈打つ。嫌な記憶が蘇ってくる。 「貴方は何でも知っているんですね。まるで魔法使いだ。」 老人はクスっと微笑み 「そうですね、私は魔法使いということにしておきましょうか。どうです?運命の相手作りますか?」 真咲は悩んだ。そんなこと出来るわけ無いと思っていても心のどこかでもしかしたらと思う自分がいる。 今まで愛されずに育ってきた。親に捨てられ孤児院で育ち、友人も恋人も居ないまま二十年の時が経った。 誰か唯一無二の存在に愛し愛されたい。真咲の一生の願いでもあった。 その願いが今叶うなら??? 「僕も誰かに愛されたいです。それが叶うなら僕に相手を作ってください。」 「分かりました。私はお金は頂かない主義なんでね。料金の方は一週間で貴方の寿命の十年分に相当します。それでも宜しいですか?」 「寿命?!そんなこと出来るわけ・・」 出来ないと言おうと思ったが思い留まった。 さっきの老人の一言が胸の中に残っている。 十年、長いような短いような。それでも構わない。 一人寂しく生きるより十年削って七日愛された方がよかった。 今の真咲はそれほど愛に飢えている。 「分かりました。十年差し上げます。お願いします。」 「これで契約成立ですね。」 老人は不適な笑みを浮かべた。
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