奇妙な店

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 小学校からの付き合いであるケイとユウ。学生時代では毎日のように遊んでいた二人も、ケイが社会人になってからは会う頻度が年に数回のペースにまで落ちていた。  そんな彼らだったが、通りかかればいつも決まって足を止める場所がある。S県S市の国道沿いにある、だだっ広いホームセンターの敷地の片隅にぽつんと佇むこぢんまりとした店「魔女の薬箱」。外から見えないよう意図されているのか、中を窺い知れるような窓はなく、入口のところに球体の灯りがぶら下がっているだけである。よく見ると、擦れた赤い字で「夜11時から深夜3時まで」とある。  その営業時間も変だが、それよりもっと不思議なことがある。なんと、その店の主の姿を誰ひとりとして見たことがないのだという。深夜3時で閉まるのだから、その30分から1時間もすれば店内は消灯され、主が姿を現すはずなのに、誰もその瞬間を見たことがないらしい。  一度興味本位で店の前で待っていたケイとユウだったが、それほど感じていなかった眠気が午前3時を過ぎた途端急にやってきたのだ。まるで眠り薬でも飲まされたかのような違和感に気味が悪くなり、二人はよろめく足で逃げるようにして店を後にしたのだった。  その後二人は、昼間でもそそくさとそこを通り過ぎるようになった。 「魔女の薬箱」、一体どんな店でどんな人が経営しているのか、その答えは妄想の中で留めて置いた方がいいのかもしれない。
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