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いちかは悠里と違って延々と話し続けるのが得意な方ではない為、所々辿々しかったりするが、
「それならアレは?」
「はい、勿論知ってますよ」
奏汰は的確に話を繋ぎ、初対面故の気まずさは微塵も感じさせなかった。
それからも会話は尚も続き、二人は共通の趣味を見付けて話は更に盛り上がる。
「"悪魔の鎮魂歌ーレクイエムー"っていう携帯小説知ってる?」
「知ってますよ!私も大好きなんですよ!」
「ほんま?俺もめっちゃ好きやねん」
「本当ですか!私は中でも狼騎と虎次郎ってキャラが格好良くて好きなんです!」
「わかるわー、ほんで最後の展開がかなり衝撃的やねんな!」
それから休憩時間一杯の約二時間、二人は休む間もなく盛り上がったまま、いちかの中の奏汰に対する印象がまた少し変わった。
悠里から聞いていた話から、いつも的確な相槌で話を聞いてくれるクールで忍耐強い聞き上手な人だと思っていたのだが、実際には趣味の話だと一緒に盛り上がってくれる少年のような人物だと理解する。
一方で仕事には真面目で、更に優しく教え方も上手で覚え易い。
「悠里さんが惹かれるのもわかる気がする…」
それによりいちかは、次またバイトに来る日が楽しみになった。
「蓮見さんって、お兄ちゃんみたいですね」
「まー妹がおるからな」
そんな調子で、また一週間と時が過ぎたー。
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