パの無いパチンコ店

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フェリー乗り場までの道中、そこに奇妙な店はあった チケットを買ってから時計を見ると出港の時間まではまだ時間がある パチンコなんて普段はしないのだがどうしても気になってしまいあの店へと舞い戻る事にした。 車を走らせ見えてきたビルの上で光る電光 パの電球は全て消えていてそれ以降の文字がハッキリクッキリと輝いている パの部分の電球を変えられない店なんて負ける匂いがプンプンするのに覗いてみたい欲求には勝てなかった 車を止め降りてから今一度上を見上げる 「ははっ」 間近で見るとつい笑ってしまう わざとか…これはわざとなのか? そればかりが気になってしまってしかたがない。 しばらく笑いが止まらず眺めているとふと思い出す 最近忙しくて笑っていなかったな 家に帰っても子供の相手どころか嫁ともろくに会話をしていなかった なんでこんなときに思い出したのか、笑いと言うのは人を穏やかにしてくれるのかもしれない そのお礼と言ってはなんだが船の出る時間までここで遊ばせてもらおう。 そして家に帰ったら久しぶりに嫁と子供たちを遊びに連れていこうと思う そう決めると胸の辺りが不思議とスッと軽くなった そして俺は意気揚々とパの無いパチンコ店へ歩を進め動作の遅い自動ドアの向こうへ消えた。 end
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