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「へえ…いないんだ。それで僕の事を聞いてどうするつもりだったんです?彼女にでもなるつもり?」
「えっ、そんな事は……」
相変わらず物凄く近い距離から課長が聞いてくる。
静かなフロアに私の心臓の音が響きそうな気がしてくる。
「どうして?僕に興味があるんでしょ?」
ほんの少し課長の表情が緩んだ気がした。
今なら言えるかも。
素直に私の気持ち、言ってもいいってこと?
「わ、私、前からずっと課長の事が気になっていて…。」
言ったぁ。
遂に言ってしまった。
玉砕するの分かってるから告白するつもりなんてなかったのに。
こっそり見てるだけで良かったのに。
課長は所謂、イケメンの部類に入る。
なにも私自身がそんなイケメン課長の彼女になろうとかたいそれた事、思わない。確かに課長の事が好きだけどどこをどう取っても平均以下の私からすれば課長は雲の上の上のそのまたずっと上の人。
私にはテレビに出てくるイケメン俳優と同じ並び、遠い存在の憧れの人なのだ。
この密かに抱いている思いをどうにかしようなんてとんでもない。
幸いにも同じ課にいるから、課長の生(なま)の姿をそっと盗み見るだけで私は十分満足している。
それなのにそんな事を聞いてしまったのは、ただ単に気になったから。こんなにモテる人だから当然彼女くらいいるんだろうなって。
芸能人が陰でこっそり付き合ってるように、課長にもそんな人がいるのかもしれないって。
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