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そうだとしたら、いつまでもこうしてる訳にはいかないよね。
「すいませんでした、帰りがけに変な事言って。勝手な事を言いますが、今さっき言ったことは全部忘れてください。何も聞かなかった事に…」
目に溜まった涙をさっさと手で拭いて、一刻も早くこの場から離れなければ。
すると課長は私のデスクに軽く持たれるように立つと腕を組み片方の手は顎に当てられた。
課長が何か考え事をする時によく見るポーズだ。
180はある長身の課長は全体的に細身で、スラリと伸びたその足は持て余すかのように今は軽くクロスされている。
その姿はいつ見ても隙がなくそして絵になる。
短く切り揃えられた黒髪は色白な肌が一層際立ち、スッキリとした一重瞼の切れ長の目、筋の通った鼻に薄く引き締まった唇。
それらを更に引き締めるかのように存在する黒のチタンフレームを細くスッと伸びた繊細な指先が軽く持ち上げる。
やっぱり格好いい。
こんな事になって今更だけど、やっぱり私、課長の事はそっと見てるだけで良かったな。
課長は観賞用にしておくべきだった。
そうすれば、こんな風にならなかったのに。
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