青い地球はてのひら

1/6
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ

青い地球はてのひら

 どこまでも続く緑の草原。空は青く、ところどころに白い雲がポッカリと浮かんでいる。爽やかな風が足元の草を一様に揺らしながら、丘の上へと登って行く。  その風の向こうに、背中に小さな羽根の生えた生まれたばかりの赤ん坊のような物体── 以前に僕が暮らしていた世界では使と呼ばれるソイツが地上スレスレを飛び、猛スピードで消えて行く。  ふざけるな!いくら僕が高校総体(インターハイ)の陸上競技大会で2連覇を達成したスーパーアスリートだからって、追いつけるわけがないだろ!  仕方がない。アイツを呼ぶか…… 「勘太郎(カンタロウ)!おーい、来てくれー!」  空に向かって叫ぶと一点がキラリと光り、やがてそこから白くて大きな物体が降りて来る。 「お呼びですか?宗太郎(そうたろう)様」  地上に降り立つソイツの声は低く、腹の底に響く。勘太郎は以前に僕が暮らしていた世界で、実家の隣の家で飼われていた犬だ。  グレートピレネーズと呼ばれる犬種で、その名のとおりフランス、スペイン国境の山岳地帯の原産。白く長い毛で覆われており、立ち上がると僕と同じくらいの大きさになる。  でもそれは以前に僕が暮らしていた世界での話。この「アンジェラ」の地では、ヤツは巨大な姿。顔だけで僕の数倍の大きさがあり、空も飛べる。しかも日本語を話す。  元々、以前の世界ではお隣同士。宗太郎と勘太郎、同じ「太郎」つながりで仲は良かった。でも、同じご近所さんのはずの茉莉花(まりか)にはまったく懐いていなかったな。アイツは猫派だから……  この「アンジェラ」の地に来てからと言うもの、言葉が通じることもあって、さらに親密になった。なぜ勘太郎が巨大な姿になり、しかも空を飛べるようになってアンジェラにいるのかは謎だけど。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!