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「ルークのヤツが城から逃げ出したんだ。頼む、ルークを追ってくれ」
息も絶え絶えに、ひざに手を置いて言う僕に勘太郎は「仕方ない」と言うように眉間に皺を寄せる。いや、実際に寄せてるわけじゃないのだけど、目の上に生えている数本の長い眉毛が中央に寄ったように見えたのだ。そして僕に背中に乗れと言うように少しだけ躯体を傾けてくれる。
「サンキュ、勘太郎」
僕が首の付け根あたりに登ると、勘太郎は立ち上がった。
「しっかりつかまっていてくださいよ」
そう言うと勘太郎の躯体が宙に浮き、ものすごいスピードで急上昇を始めた。思わず鬣にしがみ付いて目を閉じる。しばらくして風圧にも慣れて来たので目を開けてみると、眼下にはアンジェラの清らかな大地が広がっている。浅い緑に輝く草原、青い水をたたえる大河や深い緑の大きな森……
そして勘太郎が飛ぶ先に、僕の元から逃げ出した天使の姿が見えた。一気に急降下して近付くと、その天使を口にくわえる勘太郎。その瞬間、ルークはなんとも不思議な叫び声をあげた。そして地上に降り立つ。
「てめー、宗太郎!勘太郎まで使って、卑怯だぞ!」
勘太郎の口から解き放たれた天使、ルークは僕の目の高さの位置で静止して体中を真っ赤にさせて怒っている。そーゆーのを、以前に僕が暮らしていた世界の、ちょっと未来の言葉では「逆ギレ」って言うんだぞ。
「逃げ出すほうが悪いんでしょ」
「俺にはわかるんだ。あのアンジェラ様の呼び出しは、ロクなもんじゃねぇ」
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