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ルークは── と言うより、この地に棲む天使のそのほとんどは見かけの印象とは違う低い声をしている。
「それはハズレだな。侵入者だってさ」
「なにぃ!早くそれを言え、バカ!」
「言う前に逃げ出したのはどっちだよ。バカにバカって言われたくないよ!バカ!」
ここは全ての時空を統括する地、「アンジェラ」。以前に僕が暮らしていた世界で言う、『あの世』に近い場所だ。完全に僕が暮らしていた世界とは隔離されているが、以前の僕がそうであったように、たまに迷い込んでしまう者がいる。そんな稀有な者達は、たいていこの地の女王であるアンジェラが対応に当たる。以前の僕がそうだったように。
この「アンジェラ」の地は僕が暮らしていた世界では伝説のように語り継がれて来た。この地を桃源郷か何かと思い違っている者もいる。そんな連中がもし、この地に迷い込んでしまったら大変だ。この清らかな大地が荒らされてしまうかも知れない。
なので、そんな猛者が現れた場合にはこの地での記憶を消去した上でお帰りいただく── まぁ、穏便に行くはずもないので、たまには武力も行使する。血の気の多いルークは『侵入者』と聞いて興奮しているみたいだ。
「となれば、話は別だ。勘太郎、城まで送って行ってくれ」
「…… 仰せのとおりに」
ルークの言葉に勘太郎は再びその長い眉毛を中央に寄せるが、背中を傾けてくれる。やった!コイツに乗れば城までひとっ飛びだ。僕はルークを抱き再び勘太郎に乗る。
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