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女王、アンジェラが住む場所は以前僕が暮らしていた世界での、中世の城を模したような造りだ。いや、もしかしたらヨーロッパの中世の人達が── 何かの拍子にこの地の記憶を持ってしまった人達が、この城を模して造り上げたのかも知れない。
その城の、言わば応接室のような天井が高い広間へと進むと、中央のソファーにミカエルの姿が見える。
ミカエルの奴も天使なのだが、ちょっと特別な地位なので人間の姿をしている。金色の長髪、碧眼。細身の長身で見た目も良い。こっちからは後ろしか見えないが、向かい側には人間の姿をした女性と思われる人物が座っている。
近付くにつれて2人の会話が少しずつ聞こえるようになって来た。やがて僕に気付いたミカエルが言う。
「ホラ、お目当ての人物の登場だよ」
西洋の騎士のような容姿であるミカエルだが、やはり日本語を話す。なんか、泥棒が主人公である人気アニメの世界のようだ。外国人風味のどんな人物でも言葉が通じてしまう。
ミカエルの言葉に、女性が振り返る── あれ?
「あ…… 宗ちゃん」
「有佐?なんでオマエがここにいるんだよ!」
「今、俺が聞き出そうとしていたところだ。まぁ、座れ」
驚いた。僕に隣への着席を促したミカエルの向かい側に座っていたのは、以前僕が暮らしていた世界での高校時代のクラスメイト、水城有佐じゃないか!
「で。話してくれるかな、有佐ちゃん」
「その前に、いいですか?」
と、ミカエルに質す有佐。ミカエルが頷くと有佐は視線をこっちに向けた。その顔が……
怖い……
「ちょっと宗ちゃん!やっぱりこんなところにいたのね。いったいどーゆーつもりなのよ。いきなり私達の前から消えたりして。みんな本当に死んじゃったのかと思ってるよ。まぁ、私と茉莉花ちゃんは、どーせこんなことだろうと思ってたんだけど」
「…… ゴメン」
…… 謝るしかない。
「茉莉花?知り合いなのか?」
「宗ちゃんのお通夜の時に知り合ったの。私と茉莉花ちゃんはいいのよ、別に。でもミッコが……」
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