ジャンヌダルク 1993

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「有佐ぁ!?」  そこには左手に大きな弓を持った有佐が立っていた。その目は…… 姿こそいつもの和装だけど、こっちの世界で会っている有佐のものではないことが、すぐにわかる。  僕を睨んではいるものの、どこか懐かしささえ感じるような視線だ。思わず有佐の元に駆け寄る。 「なんだかわからないけど、間に合って良かった。ちょっと!どーゆーことなのよ、宗ちゃん!」  宗ちゃん?…… ってことは、彼女は僕が知っている、千年後の有佐? 「なんとか間に合ったか。危なかったな、宗太郎」  ミカエル…… そうか。アンジェラの命で、ミカエルが千年後の有佐を連れて来たのか。でもどうして。 「有佐。弓なんて扱えたのか」 「ウチの高校には弓道部がなかったからね。言う必要もなかったから言わなかったんだけど、私のお父さんは弓道が趣味なの。だから私も小さい頃から教わってたのよ。  でも…… 人を射ったのなんて初めてよ。しかもこんなに重たい服を着て。物凄く怖かったんだから!宗ちゃんのバカ!」  有佐に腕を射られてうずくまっている男を、検非違使(けびいし:下級の警官のような人)達が取り押さえる。やれやれ、どうなることかと思ったけど。 「サンキュ、有佐。借りができたな」 「いいのよ、そんなこと。でも、宗ちゃんが無事で良かった。バカ!」  …… バカは余計だよ。 「さぁ、行こうか。有佐ちゃん」  ミカエルが有佐の肩を抱き、その場から連れ去ろうとする。 「権中将殿…… いや、ミカエル!」 「あ?」  権中将殿の格好をしたミカエルが、首だけを僕のほうに向ける。 「助かった。サンキュ」 「ああ。あとは後始末だな」  有佐の肩を抱いているほうではない腕を軽く挙げて、それだけを言うと2人はまた、どこかへ行ってしまう。  きっとミカエルは有佐を一度アンジェラへ連れて行き、記憶を操作した上で千年後の世界に戻すのだろう。  そうか、後始末か。でも男が最後に言った「紫苑姫と美緒姫の思惑」という言葉が気になるのだけど。
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