アナタとイキル

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アナタとイキル

 千年後の有佐を送り届けたであろう、ミカエルと一緒の牛車で式部宮邸に向かっている。  もう1台、後ろからついて来ている牛車── そこにはミカエルが手配した検非違使達のほかに、有佐に腕を射られた男も同乗している。  幸いにも命に別状はない程度の傷ではあるが、念のために最低限の治療と止血は施してある。  に、しても。紫苑姫と美緒姫の思惑…… 男が発したその言葉が気になって仕方がない。  ミカエルと千年後の有佐の派手な登場によって、その先を聞きそびれてしまったけれど。ひょっとしたら僕の推理はどこか的を外していたのではないか?そう思ってしまう。 「悪かったな。ちょっと戻って来る地点がズレたせいで、宗太郎には怖い思いをさせてしまったな」  俯いて、ずっとそんなことを考えていたのでミカエルには僕が恐怖にうなだれているように見えたのかもしれない。僕は黙って、そんなミカエルに笑いかける。やがて車が式部宮邸に停まった。 「じゃあ、気を付けて行って来いよ」  牛車を降りた僕にミカエルが言う。ミカエルや別の車の検非違使達、それに捕らえた男も、この車止めで待機だ。僕だけが紫苑姫の元に向かう。  現れた侍女、伊勢の先導で紫苑姫の対屋に向かっていると、後ろから慌しい足音が迫って来る。まさか、さっき捕らえた男が逃げ出して奇襲を仕掛けて来たのか?と、ビクビクしながら振り返ると、それは隼人であった。  え?隼人?ミカエルの命令で美緒姫の家に詰めているはずの隼人?なんでここにいるんだ? 「待った、宗太!違うんだ。ちょっと待ってくれ!」  僕の元に駆け寄って来る隼人。え?どーゆーこと?隣にいる伊勢に訊ねようと思って目配せをしても、伊勢は不思議な表情をするばかり。 「まぁ、いいや。紫苑の部屋で話そう」
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