アナタとイキル

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「紫苑姫と美緒姫の思惑……」  ミカエルに呼び止められて逃げ出す途中に、有佐によって弓矢で射られる直前。彼は僕に全てを告白する、まさにその時であったのだ。  重ね重ね、彼には悪いことをしたな。ミカエル達が登場するタイミングがもう少し早いか、もしくはもう少し遅かったら…… あんなにも痛い思いをしなくても済んだのかも知れない。 「私達はてっきり、盗賊は紫苑姫の手のもので、美緒姫の作品を盗み出したのだと推理してしまっていた。  それで今回の作戦を立て、式部宮家に傷が付かぬよう、隼人少将を遠ざけて事件をまるく収めようと考えていたのだが……  しかし、騒ぎが起こってしまったことも事実。ここはひとつ、『不仲説』を生かせるように、ことの顛末を私に任せてはくれないか?」  全ての話を聞き終えて、ことの全貌を理解したミカエルが言う。そう。ここにいる紫苑姫は自分のせいで騒ぎが大きくなってしまった罪悪感に駆られているに違いない。  ことが露見した今、懲罰さえも恐れているだろう。それを全てまるく収める── 式部宮家が傷付くことのない方法をミカエルは知っていると言うのか。 「まず、隼人少将。清原少納言家の姫に伝えてくれ。あなたはこれからも何も変わらず、今までどおり執筆活動に勤しんでください、と。  そして、こちらの紫苑姫殿との文のやりとりを、今までどおり続けられることをお約束すると」 「はっ…… お言葉、確かに」  そう言って深くお辞儀をする隼人。上げた顔は、どこかホッとしているようにも見える。 「さて、紫苑殿。あなたには罰── というわけでもないのですが、後宮に出仕していただきたいと考えております」 「こ…… 後宮に、でございますか?」
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