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やれやれ。一時はどうなるかと思ったけど、これでどうにか一件落着だな。
…… って、
「あ!」
「どうした?」
僕が突然大声をあげたものだから、みんながびっくりしてしまった。
「ミカ…… 権中将殿?ウチの女房に射られてしまった、可哀想な男なのですけど」
「ああ。それなら、ちゃんと治療をした後、彼にも後宮に行ってもらう」
「ってことは」
「ああ。気心が知れている者のほうがいいだろう?彼に続けてもらおうと思う。無意味に傷付けてしまった償いにね」
おぉ!さすがミカエル!話が早い。
「さて、もうひとつ。左近少将、お願いがあるのだけど」
「はっ!」
「お願いと言うより、お詫びだな。今回の盗賊騒ぎ。なかったことにするためには、このまま犯人を捕まえずに、風化を待つのが得策だと思う。
盗賊を捕まえられないことに、圧力をかけて来る上役もいるだろう。捕まえられないからと言って、少将の評判が下がってしまうかも知れない。それに耐えていただきたいのだが」
「とんでもございません。式部宮家に咎めがなかったことにしていただけるのでしたら。この隼人、どんな試練にも耐える覚悟でございます」
「なーに、大丈夫だよ。梨壺女御経由で、いずれ事実をそっと主上の耳に届くようにしておくから。言いたい奴には、言わせておけ」
「ありがとうございます」
良かったな、隼人。これで式部宮家も安泰。僕も安心してアンジェラに戻れるよ。って、そうか。僕は今夜、アンジェラに戻らなければいけないのだ……
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