午前2時のエンジェル

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「どうって、お互いを意識し合っているというか。仲はよろしくないと聞いてるけど」 「ふふふ…… 実はね── 本当に内緒だからね。それはまったくの嘘なんだ」 「嘘?」 「んん。実は、あの二人はとても仲がいいんだ。ずっと文を送り合っているほどね」 「え?あのお二人が?そんな……」  紫式部と清少納言の不仲説はそこまで浸透しているのか。にわかには信じられない。と言うような表情をしている美津子姫。そしてしばらくして、何かをひらめいたような表情になった。 「ねぇ、式部宮家の盗賊騒ぎって、もしかして」 「そう、そのとおり。実は式部宮家に現れた男は、盗賊などではなく、紫苑姫と美緒姫との間を行き来する、文のやり取りをしている者だったんだ」  それから僕は美津子姫にことの一部始終── 今日の出来事までをこと細かに説明するハメになった。  貴重な時間を、もっとほかのことに使いたいような気もしたのだけど。でも僕の話をウンウンと熱心に聞いてくれる姫の姿に、これはこれでいいのかな。とも思う。  さっきまでの僕だったらまだ、この時間が永遠に続いてくれたら。と考えていたかも知れない。  でもミカエルに言われて思った。またきっとどこかの世界で美津子ちゃんには会えるのだ。その時がいつになるのか。それを考えて過ごすのも悪くはないだろう、と。  また右腕が痺れるように痛くなって目を覚ましてしまった。今は何時頃なのだろう。かなり夜も遅いはずだけど。  その腕の上に美津子姫の頭がある…… ってことは、僕はまだこの世界にいるのか。  眠気に負けて薄れ行く意識の中、僕は頭の中で美津子姫にさよならを告げたのだけど、まだしっかりと彼女は僕の腕の中にいる。生まれたままの姿で、無防備に寝息を立てる美津子姫が。  もう一度、頭の中で美津子姫に別れの言葉を告げる。彼女をぎゅっと抱きしめながら。  ありがとう美津子姫。短い間だったけど、君とこうして仲好くなれて僕はとても幸せだったよ。  丑の刻を過ぎれば、僕は元の『天使』に戻ってしまう。君が次に目覚めた時、ここにいるのは僕ではない僕なのだ。  できればそんな僕と、これからもずっと仲好くして欲しい。  ありがとう。そして、さようなら美津子姫。またどこかの世界でお会いしましょう。 (未来を泳ぐ日1.5 -丑刻の天使- 完)
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