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幻想ゲーム
目を覚ましたけれど…… ここはどこだ?てっきり実家か大学に通うために一人暮らしをしている部屋で目覚めると思っていたのだけれど。
ここは何か、とても和風な空間だ。だだっ広い板の間の部屋の布団に、僕は横になっている。着ている服も真っ白な和服で。なんだ?何がどうなっているんだ。
お?
頭を掻こうと思って手をやった後頭部に違和感がある。髪の毛が全部上に向いているような感じ。思えば頭の天辺あたりが少し重たいような気もする。なんだなんだ?この髪の毛って天辺で結ばれているのか?チョンマゲ?わけがわからない……
ガラッと部屋の戸が開いて眩しい光が差し込んで来たので、思わず目を細める。
「あらぁ、宗太さま。もうお目覚めでしたの?でしたらお手水をお済ましくださいませ。すぐに朝餉のご用意をいたしますわ」
そう言って和服の女性が僕のもとへと近寄って来る。逆光でよく見えないが、確かに和服で髪もものすごく長いように見える。近付くにつれて、その顔も見えるようになって来た。
あ……
「有佐」
「どうしたのですか?変な夢でもご覧になられたのですか?生まれた時からご一緒である乳母の娘にそれほど驚かれなくても……」
きっと僕は有佐を見ながら、すごいアホ面をしていたのだろう。あぁ…… でも状況がつかめない。
「ゴメン。ちょっと考えたいことがあるから、しばらく独りにさせてくれないか?」
目の前まで来ていた有佐が溜め息を吐く。顔面とその声は有佐そのものなのだが、着ている服はちゃんとした和装で髪の毛も引きずるほど長い。
「わかりました。今日はまだ早いですし、もう小半時もしましたら、また伺いますわ。それまでにお手水を……」
「ああ!わかってる!」
ちょっと強めの口調で言うと、有佐は渋々部屋から出て行った。確かアンジェラは心に強く思えば、意識レベルで交信ができる。って言ってたよな……
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