Prologue. Flash Point

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 広がる『時空』は無数に存在するため、その相互間または対「アンジェラ」との間でトラブルが起こることがある。  まぁ、トラブルを起こすのはなのだが。  そんな時には女王であるアンジェラの命により、それぞれの時空に天使が派遣されて事前に決められた解決策を遂行する。  そうすることで、この宇宙に存在する無数の時空のバランスと治安を保っているのである。  幸崎(こうざき)宗太郎(そうたろう)も、この「アンジェラ」に棲みつく使のひとりだ。  住人になってから何度もトラブル回避の任命を受け、そして遂行して来た。  特別な理由でアンジェラの住人となった宗太郎は赤ん坊の背中に羽根が生えているような他の天使とは違い、ニンゲンの姿をしている。  この地でニンゲンの姿でいることを許されているのは大天使と呼ばれる一握りの者だけ。  宗太郎は大天使ではないものの、それに相応しい待遇を得ている個体なのである。  夕暮れを迎えようとしている「アンジェラ」── 一面に草原や森が広がる清らかで温和な世界。  この地には時間や時刻などの概念が一切存在しないため、不定期に昼と夜が繰り返される。  住人達は陽が暮れれば寝床に就き、いつ訪れるかわからない夜明けまで眠り続ける。  女王アンジェラの城に明かりが灯った頃、天使達が続々と集まり始めた。 「あれ?宗太郎、見なかった?」  ニンゲンの姿をしている大天使、ミカエルがキョロキョロする。そう言えば宗太郎の姿が見当たらない。 「あぁ、森に行くと言って出て行ったなぁ。急に暗くなって来たから、森で一晩明かすんじゃないか?」  天使のひとりが言う。 「そっか…… パウロの奴の根元で休まなきゃいいのだけど……」
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