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左右を行く者達はどこかで顔をみたことがあるようなだけの集団。
それでもなお統制が取れているのは、祖植という首領が居たからだろう。
暗夜獣道を徒歩で進む。かがり火が申し訳なさそうに数カ所にあるだけ、警備の不寝番も片手で数えられそうな程少ない。
穀物を茹でた匂いが仄かに漂ってきた。貧民が決して口に出来ない米や麦のそれだ。
農民が畑を耕し作物を育てても、一口も自分たちが食べることは出来ない。
雑草をむしり、虫を捕まえ、木の根をほじり、鍋に入れて泥水で煮る。彼等棄民の主食は野生の木の実やたまに狩った小動物のみ。
怒りがこみ上げて来る、役人が憎くてたまらない。
「行くぞ、野郎ども続け!」
祖植が号令をかけて一気に暗闇の中、廃城への丘を登る。
手にしてるのは木の棒、石を蔦で括り付けた槌、研いだ溶岩石を先につけた槍。稀に青銅の剣を持っている者が居た。
身を護る鎧などつけているものは皆無。祖植とその側近数名だけが胴を守るために多少身に着けているだけ。
そのため身のこなしは軽い。敵意と殺意を胸に一気に孫権軍へと襲い掛かった。
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