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「て、敵襲! 夜襲だ!」
警戒していた兵が腹の底から叫ぶ。
普段山野を駆けている男達が、無防備な軍へ奇襲を仕掛ける。個々の戦闘力は高いとは言えないが、士気が全く違った。
祖植が先頭に立って軍兵と切り合う、それに対して孫権は銅鑼の音を耳にして寝床から飛び起きている最中。
幕のどこに剣を置いたか一瞬解らなくなり、慌てふためき手探りする有様だ。
「殺せ! 奪え! 俺達の全てを取り返すんだ!」
山越賊は怒声を上げて孫権軍を厳しく攻め続ける。
指揮が下らない孫権軍は個別に戦い不安に苛まれる。すでに大将は逃げ出してしまったのではないかと。
孫権はようやく見つけた剣を手にして鎧もつけずに幕を飛び出した。
かがり火は蹴倒され、月明りだけが周囲を照らしている。血の匂いが充満している、おそらくは敵よりも味方のモノのほうが多く流れているだろうと悟る。
不意打ちを受けて圧倒的不利。孫権にも刃を向けて来る賊が現れる、本陣中枢にまで踏み込まれたのだ。
「うぬぬ、おのれ下郎が!」
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