始まり終わる悪魔の店

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「はぁ……」 一人夜の道をトボトボと歩いている男がため息をついた。この男はプロボクサーを目指しているのだがなかなかその夢が叶わない……自分は小さいころから喧嘩が強かった。だから簡単にプロになれると思いボクサーになったのだがそんな自分の考えは甘かった。周りには自分より強い奴がたくさんいた……自分は強いという自信は砕け散り自分がちっぽけな存在に見えてくるほど厳しい世界だった。今日もたった一発パンチを受けただけで自分はリングの上で倒れてしまった。 仲間からは馬鹿にされコーチからはどやされ、親からはそんな夢はとっとと諦めてちゃんとした職につけと言われる毎日……自分は頑張っているのに報われない。 「くそっ!」 モヤモヤとしたこの思いを道端に落ちていた空き缶に八つ当たりするように力強く蹴る。すると、 「痛っ」 空き缶が飛んでいったほうから声がした。しまった、誰かに当たってしまったらしい。これは早く謝らないと……そんな思いから空き缶が当たってうずくまっている人に駆け寄る。 「すみません、大丈夫ですか!?」 駆け寄りうずくまっている人に声をかける。蹲るほど痛いらしい大丈夫かなと心配して声をかけると、何と何事もなかったかのようにいきなり立ち上がってきた。 「大丈夫ですよ、ご心配なく」 顔と低い声からして男だった。だが服はこの夜の闇に溶け込むように全身黒い服を着ていた。それはまるで漫画に出てきそうな執事のような服だった。その異様な格好に驚いていると黒い服を纏った男が話しかけてきた。 「すみませんが……貴方、何かお困りごとでもあるようですね」 「はあっ?」 唐突にそんなことを言われたのでビックリして声を上げてしまう。何なんだこの男は……服装と言い今の言動と言い怪しい男だ。
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