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「そこの椅子に座って待っていてください」
言われた通りに椅子に座る。黒い服の男は店の奥まで行き、カーテンのようなものをめくりさらに奥へ入っていった。あれはよくレンタルビデオの店とかである18禁のエリアと普通のエリアを分けているようなカーテンぽいものだ。
男が奥へ消えていったのを確認すると俺は改めて店内を見渡してみる。店内には商品棚などはなかったのだが壁には絵画がびっしりと飾られていた。それも隙間なくびっしりと……よく見てみれば
モナリザのような有名な絵画まであったがきっと偽物だろう。本物だったらどこかの博物館とかに寄贈されているはずだからなぁ、と考えていると男が戻ってきた。男は両手で小さな箱のようなものを持ってきて机の向こう側の椅子に座り、俺と向き合うようにして座った。
「貴方はプロボクサーを目指していますね?」
「えっ!?」
驚いた。何故そのことを知っているのだろうかという疑問が出たが男の言葉ですぐに解決した。
「いやぁ、その体を見れば分かりますよ。体が他の人とは違い鍛えられていますからねぇ」
「そ、そうですか」
見れば分かるのか。まぁ、男の言う通り体は鍛えられており普通に働いているサラリーマンと比べたら明らかに筋肉の盛り上がりかたとかが違うもんな。
「ですが貴方は私と会ったとき空き缶を蹴り飛ばした。これは恐らく何か気に食わないことがあったから例えば……周りが強くて自分の実力の小ささを知ってしまったとか。プロになりたかったけど自分では無理だと思ってしまったとか」
「うっ、何でそんなことまでっ!?」
「あくまでも推測だったのですがその様子だと図星だったようですね」
ニタニタと気持ち悪く笑う男に、そしてあの時の気持ちが湧き上がってきてイライラしてきた。俺は椅子から勢い良く立ち上がった。帰ろう……そう思って扉のドアノブに手をかけたときだった。
「そんな貴方に良い物をあげましょう」
その言葉にドアノブから手を離し男の方を見る。机の上にはあの小さな箱が置かれていた。
「良い物って何だよ」
「まぁまぁ、イライラしてないで一旦お座りください」
しぶしぶ言葉通りに座る。また何かイラつかせるようなことが起こったらすぐさま帰ればいい……半分やけくそみたいな、そんな気持ちで椅子に座った瞬間、男は喋り出した。
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