探偵は止まれない

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「ちょ、待て、俺は何も関係な」「嘘だろ!? そいつ、今たまたま歩いてきたヤツじゃねぇかよ!」そうだ、その通りだ。男の言うことが正しい。もっと言え。そして俺を解放してくれ。 「残念ね。貴方と出会うより前からの知り合いよ。今だって、貴方に会う前に連絡して、来てくれるように頼んだのよ」 「おい、何を勝手な」「いいから合わせて!」  ギッと鋭い眼光に睨みつけられて、俺は思わず怯んでしまった。 「私と加納さんはね、毎日セックスするほどラブラブなの。もう、大変。何回ヤってもヤっても離してくれないのよ。貴方と違って情熱的だわ」 「ちょっとそれは無理が」「うるさいって言ってるでしょ!」  どうやら、黙っていた方が早く解放されるかもしれない。  だんまりを決め込むと、今度は男の方が訳のわからないことを言い出した。 「お、お、オレだってなぁ、その、加納……さん、と、密接な関係があるんだよ!」 「へえ~? 一体、どんな? 初対面丸出しで、何を言うのかしら」 「加納さんとセックス三昧なのは、お前じゃなくてオレなんだよ!」 「は!?」「ハァ!?」  一体、何を言い出すんだ、この脳みその溶けた男は! いや、女の方も女の方だが。どうせ誤解されるなら、美人との浮気だけにして欲しい。男とセックスなんて、そんな気持ち悪い―― 「そんな簡単にわかる嘘吐いて、一体どういうつもり?」 「嘘じゃねぇよ! なぁ、加納!」 「俺はお前たちに会うのは初めてなんだが……」 「やっぱり嘘じゃねぇか!」「アンタだって嘘吐いたじゃない!」 「……もういい加減にしてくれ」  俺は女の腕を振りほどく。「一体、何が喧嘩の原因なんだ。少し冷静になれ、お前ら」  気まずそうに視線を絡ませた二人は、そっぽを向いて喧嘩の原因をぽつりぽつりと話しだした。 「この人が、メール送っても三十分も無視して……」「会社の会議中だったんだよ。携帯なんか弄れるかよ。大体、お前だってメールを十分も無視したじゃねぇか。それどころか、メールに『好き』って書いてくれねぇし」「書いてるわよ! ただ、縦読みなだけで」「気づくかってんだ」 「…………」
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