営業マン 広川

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「私の名は広川 です。営業をしていました」 「そうかそうか。営業の方ですか。その子は西田さん。大学時代は文学部でした。わしはしがない読書家ですが、子供の読む本は全て読んでいますよ。早速ですが……広川さん。この本たちを頼みますよ」 老人はそう言うと本屋の奥へと、吸い込まれるように消えていった。 老人が消えると、本の埃の匂いが弱くなった。 私は今日もピンク色のネクタイを締めていたが、少しだけ緩めて西田と店番をしながら今後のことを考えていた。 「うーん。じぁあ、街中に広告を立てて……」 「いや、それじゃ駄目だ。お金がかかり過ぎる。こうしよう……」 私の長年培った販売戦略がどこまで通じるか、試してみようじゃないか。 次の日から12歳前後の子供たちに、一冊200円で本を売る戦略をした。 有名な絵本のテーマを流した軽トラック。中には百を超える童話。 私が運転し、地域の子供たちに笑顔を振りまき販売した。 老人に聞いたとおり、どれも有名な本ばかりだった。 一寸法師や桃太郎。金太郎など、それらが魅力的な活字で書かれている。
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