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「では、私も理系で、研究をしていますから……」
「第二次世界大戦に日本が巻き込まれずに済んだのは、科学のおかげだ。私の祖父が科学技術大臣だったとき、新たな発電技術の開発に予算を分配させたことで、地熱力発電と海底化石燃料の獲得に至った。これがあったからこそ、大日本帝国は米国と対等に渡り合えた。分かるか。技術者の楽吉にしかできない政治があるはずだ」
「分かりました。左門家を背負って、おじい様のご意志をなんとか引き継ぐべく精進させていただきます」
「良かった。これで無事、西村も秘書見習いを卒業して、正式に秘書になれるな」
そういって、祖父は西村さんのほうを見やった。
「はい。改めまして、左門楽吉様の第一秘書を担当させていただく、西村永蘭(にしむらえいら)と申します。よろしくお願いします」
そういって頭を下げた。
「そうと決まれば、いよいよ来月末に迫る貴族院議員補欠選挙に向けて戦略を考えねば。私の事務所は楽吉に譲り渡すから、そこを使うといい」
「はい、ありがとうございます」
そう答えて、僕と秘書の西村さんは病室を出た。
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