前章・立候補

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「ありがとうございます。一応、全貴族議員の先生の来歴などある程度、覚えてますよ?」 「それは、その……すごいね」 「それほどでも。――本題に戻りましょう。今回の選挙方法について説明します。次のページをご覧ください」 「同爵位者の互選による制限付き連記投票……これってどういう意味?」 「伯爵・子爵・男爵議員は基本的に、同じ選挙区内に住民票のある自分と同じ爵位の方の投票によって選ばれるんです。これが、同爵位者による互選の意味です。ちなみに公爵・侯爵議員は選挙が存在せず、自動的に議員になります。制限付き連記投票については……そうですね。資料の近畿選挙区の図をご覧ください」 「議席数十に対して、六名の候補者に投票可能ってこと?」 「そうです。有権者は全候補者の中から六人だけ選んで投票します。そして獲得票数の上位十名が当選となります」 「分かった。それで、補選になる今回はどうなるの?」 「そうですね。今回は補欠選挙になりますから、全候補者の中から一人が選ばれることになります」 「ということは、普通の選挙よりも難しい選挙になるんじゃない?」 「普通はそうなりますね。ですが、楽吉先生の場合は飴也先生の地盤がありますから、そこまで苦戦とはならないはずです」 「そうか。でも、選挙戦っていうとやっぱり、街宣車に乗って大声で演説、みたいな?」 「衆院議員の選挙ならばそういうこともありますが、貴族院議員の選挙ではなくはないですが、普通の場合は少ないですね。基本的に活動としては、例えば地域ごとに子爵の有権者に集まっていただいて、前に出て演説をする形になります」 「演説か。緊張するなあ」 「安心してください。演説原稿は私が制作しておきますから」 「は、はぁ」  それでいいものなのだろうか。不安になりながらも紅茶を一口すする。
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