前章・立候補

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「予定として、まずは立候補宣言ですね。記者会見用の原稿も私が制作します。そのときに発表する公約は飴也先生の所属会派『一新会』の政策集から一部引用と、飴也先生が独自に掲げていた地元向けの公約の踏襲を想定しています。資料のこちらにリストアップしてあるものがその案です」 「リニア中央新幹線の京都・福岡間の開通とか?」 「そうですね。そちらは飴也先生が掲げておられた地元向けの公約ですね」 「なんとなく、現実味が薄いような気がする。他はないの?」 「そうですね。『一新会』の政策集は私のパソコンの中に……」  そういいながら、西村さんは鞄からノートパソコンを取り出した。 「そういえば、『一新会』って何? 政党についてはよく新聞やテレビで見るけど」 「貴族院にはもともと、衆院の政党政治を監視するという目的がありまして、貴族院には政党が存在しません。しかし、会派は存在します。これを院内会派と呼びます。会派も政党と同じように、会派内で意見の集約をして調整をして、法案などの提案や賛否について自分たちの意見が通りやすくなるようにするための組織です。政党のほうが、比較的大きくて、地方に支部を持っていることが多いですね。あと、政党交付金といって政党は議席数に応じてもらえるお金がありますが、会派にはそれがありせん」 「なるほど。じゃあ、一新会の政策を教えてもらえるかな」 「かしこまりました」  西村さんは政治的知識のない僕に、丁寧に一つずつ解説してくれた。
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