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「先に仕掛けてきたのは、お前の方だ」
吐息混じりの低い声が耳に響く。
その後、額に熱を感じた。
唇が触れていると気付いた頃には、すでに斎は私を解放していた。
しばらく呆然としていると、階下からおばさんの声が聞こえてくる。
その声で我に返り、私は慌てて斎の部屋を飛び出した。
暴れてガンガンと鳴り続ける鼓動がうるさい。
私は急いで階下に下り、おばさんに挨拶をする。
「舞ちゃん、今日はありがとう」
「いえ、とんでもないです」
「斎、どんな感じ?」
「まだ熱はあるみたいですけど…食事はしてくれましたし、薬も飲んだので大丈夫だと…」
「そう! よかった!」
安心して笑うおばさんの顔を見ているうちに、心が落ち着いてきた。
私はぺこりと頭を下げ、玄関に向かう。
「舞ちゃんが看病してくれたのなら、すぐに元気になるわね」
その言葉に振り向くと、おばさんは優しい笑顔を私に向けていた。
「いつだって、斎は舞ちゃんが一番なんだから」
「え、そんなこと…」
「あるわよ」
そう言っておばさんは悪戯っぽく笑うと、外で待っているうちの母親を呼ぶ。
「今日は本当にありがとう。気をつけて帰ってね」
「はい」
「またいつでも遊びに来てね」
私はおばさんの笑顔につられるように笑い、コクンと頷いてもう一度頭を下げた。
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