scene.12

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私達はしばらくの間、時が止まったようにずっとそうしていた。 すると、玄関先から聞き慣れた声が聞こえてくる。 「…帰ってきたな」 「そうみたい」 斎が私の肩から顔を上げようとしたのがわかって、私は撫でていた手に少しだけ力を加え、斎の頭に顔を近づける。 そして、斎には気付かれないように浅く、唇で髪に触れた。 それはほんの一瞬で、すぐさま私は自分の腕を斎から離す。 考えるより先に勝手に動いてしまった自分に、我ながら驚いてしまう。 斎は顔を上げると、私をじっと見つめていた。 ひょっとしてバレたのかと思い、私は急いで斎から離れて自分の荷物を手にする。 その時、かばんの中から覗いていたチョコレートに気付き、それを取り出した。 「こ、これ、チョコレートね」 私は自分が用意してきたチョコレートを宮下さんの紙袋の隣に置いて、部屋を出ようとする。 すると斎は、私が握っていたドアノブを私の手の上から握り、動きを止めた。 そして、私を自分の方へ向かせると、グイと腕を引き。
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