scene.12

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「先に仕掛けてきたのは、お前の方だ」 吐息混じりの低い声が耳に響く。 その後、額に熱を感じた。 唇が触れていると気付いた頃には、すでに斎は私を解放していた。 しばらく呆然としていると、階下からおばさんの声が聞こえてくる。 その声で我に返り、私は慌てて斎の部屋を飛び出した。 暴れてガンガンと鳴り続ける鼓動がうるさい。 私は急いで階下に下り、おばさんに挨拶をする。 「舞ちゃん、今日はありがとう」 「いえ、とんでもないです」 「斎、どんな感じ?」 「まだ熱はあるみたいですけど…食事はしてくれましたし、薬も飲んだので大丈夫だと…」 「そう! よかった!」 安心して笑うおばさんの顔を見ているうちに、心が落ち着いてきた。 私はぺこりと頭を下げ、玄関に向かう。 「舞ちゃんが看病してくれたのなら、すぐに元気になるわね」 その言葉に振り向くと、おばさんは優しい笑顔を私に向けていた。 「いつだって、斎は舞ちゃんが一番なんだから」 「え、そんなこと…」 「あるわよ」 そう言っておばさんは悪戯っぽく笑うと、外で待っているうちの母親を呼ぶ。 「今日は本当にありがとう。気をつけて帰ってね」 「はい」 「またいつでも遊びに来てね」 私はおばさんの笑顔につられるように笑い、コクンと頷いてもう一度頭を下げた。
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