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母親と一緒に帰る前に、チラッと斎の部屋を見遣る。
カーテンは閉じられていて、斎の姿を確認することはできなかったけれど、むしろ今はその方がよかった。
今のこの状態で、斎とまともに顔を合わせることなどできそうにない。
それでも。
そっと額に触れてみる。
そこにはまだ、斎の唇の感触が残っているようで…。
もう、限界かなと思う。
知らない間に思いの外、大きく育ってしまったこの想いを、そろそろ解放してあげないと──。
顔を上げ、夜空を見上げる。
イヴの日に見た空のように星は見えなかったけれど、あの日の星空を想像し、私はそっと瞳を閉じた。
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