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一体なにがどうなってこんなことに──
最初からあり得ない展開だった。
“お前はつまらん──”
「──……」
つまらないなら日本に帰してくれればいい──
使用人が足りないわけでもないのにここに居る意味がない。
「──…」
じゃあ…今までは居る意味が合ったのだろうか──
「カダル……」
愛美は呟いた。
これもまた、カダル(運命)なのだろうか──
「結局は都合の言いように弄ばれてポイされちゃったわけだ、あたし……」
ザイードの言葉を思い出しながらため息とともに泣きまくったせいで疲れがどっと押し寄せていた。
愛美は寝床に横になり目を閉じた。
そして片隅に置いたターミルから返して貰った赤いリュックを眺める。
「帰ろう……」
愛美はそう口にする。
「何とかして帰してもらおう──…っ…」
もう…っ…
ここに居る必要もない…
拐った本人がつまらないと言うのなら──
あたしの居場所はここにはないっ……
愛美の瞳を薄い水滴の膜が覆う──
瞼を閉じるとそれは白いシーツに小さな染みを作っていた……。
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