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俺は困惑した。
話の流れが掴めないまま話は進んでいく。
「今ここにいる君、誰かが感じた君、君が憧れる君。実在するのは今ここにいる君なんだろうけどそれって本物だって言える?」
「本物も何も俺はここにしかいない・・・。」
自分が憧れる自分。
将は自分を見返してみた。
今まで自分が誇れる自分でいただろうか?
自分の居場所を失くすことが怖くて周りに合わせて生きてきた。
自分は違うことがしたくてもみんながしたくないならやらない。
逆もそうだ。
それに発言することにさえ怯えている。
否定されるのが怖くて。
「・・・この店で提供してるのってまさか、自分が憧れる自分?」
彼は立ち上がり俺に近づいてそっと抱きしめた。
なぜだか俺は涙が溢れた。
「そうだ。嫌だったろう?飽き飽きしていただろう?これからは新しい自分を世の中に曝け出すんだ。」
「ど、どうすればいい?」
「なあに、簡単なことさ。君の人生を僕に託せばいい。君はここで見ているだけでいいんだ。新しい君が輝くこの世界を。」
「見ているだけ・・・。」
ふと将の頭をさっきの部屋で見た白骨死体たちが過る。
「託すって、君に人生を乗っ取られるの?あの死体たちってここで乗っ取られた人たち・・・?」
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