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飯塚と長井は、部屋の片隅にある喫煙室でタバ
コを吹かしていた。
長井「飯塚さん、次の会議のプレゼン丸橋部長
と打ち合わせしたんですか?」
飯塚「おお、一応、社長に報告する商品は見せ
たんだけどさ、商品名は俺につけさせろ、って
言われた」
長井は目を丸くして飯塚を見つめた。
長井「言われたって、良いんですか?そんな大
事なこと」
飯塚「あの人さあ、一度決めたら人の話聞かね
えからなあ、しょうがないよ」
長井「いや、でも飯塚さんが会社のためを思っ
て作り上げた作品じゃないですか、そこは強く
出てもいいんじゃないですかね」
飯塚は苦味つぶした顔で、ため息混じりに答え
た。
飯塚「そうだなあ、たまにはガツっと言ってや
るか」
午後、社員達は、仕切りで設けられた会議室に
集まっていた。入り口奥には来留蔵が座り、両
脇に開発課、営業課と分かれて着席することに
なっている。
来留蔵「それじゃ、着席してください」
一同は着席するが、飯塚のイスだけはやたらと
椅子がきしんでいる。
ギ、ギ、
ギィー
アァーン
ンー、ン
飯塚が座るたびに椅子がきしみ、皆の注目を浴
びていた。
来留蔵「それでは、定例会議を始める、丸橋君、
よろしく」
丸橋は神妙な面持ちで頭を下げて、電話帳ほど
の箱をテーブルに置いた。
飯塚は、その様子を睨み付けながら見ている。
何だよ、俺と長井が開発したのに、まるで自分が考えたかのような態度をとりやがって、
丸橋「それでは、新商品の発表をさせていただきます、倉持」
丸橋の隣に座っていた倉持が箱を開けた。
丸橋「最近、巷では『ドローン』という、小型の空中旋回機が流行っております。そこで、我が社としては、さらに小型の旋回機を開発しました」
倉持は、箱から円盤型の旋回機を取り出した。
丸橋「これが、我が社の新商品、『コドーン』です!」
突然、飯塚が席を立ち上がった。飯塚の目は丸橋を捕らえている。
アアーン
長井「あ、今のは椅子の音ですから、丸橋さんにケンカ売ってるわけではないんで」
飯塚は丸橋を睨み付けたまま席に座った。
なんだよ「コドーン」って、もじるところ間違ってんじゃねーか、せめてちゃんと引っ掛けろよ!
飯塚は、ぶつぶつと呟きながら、ただひたすら丸橋をにらんでいた。
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