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済ました顔の俺を見て奴は盛大に吹き出した。相変わらず何事も豪快だ……
「ブハッっ!ははははっ!…誰の真似だよそれ!いや、言うな!わかってるからっ……ブフフ……」
課長の真似だよ。わかってるようだから言わないが。
「いやぁ…腹痛てぇ……、その済ました口調…はっ……話す前の咳払い……ククッ……マジくりそつぅー……!」
『えーーえーー』の件は評価なしか?
まあ、お前も俺も課長によく注意されるからな。大半はお前のとばっちりなんだが……。
「ウケすぎ」
奴は俺の下の名前を勝手に捩って時々トッキーと呼んでくる。うちの会社は小さいけど、そういう面はうるさい。女性社員も『君呼び』だ。こんなおふざけは社長一族が居ないからからこそ出きる。
「じゃあ行くか?イナッキー」
まだクツクツ笑っている同期に俺はそう声をかけた。上席陣が誰も居ないからな。
トッキーとイナッキー…2つを並べると、昔流行ったらしいアニメキャラに似ていて俺も吹き出しそうになる。
「せめてガッキーにしてくれっ!」
ブッ……いや、それは断る。
奴がコホンと咳をした。
「えーえー…では、行きましょうか、トキオ君」
何だよ負けじと課長の真似?惜しいな課長は下の名前呼びはしねーよ。この件が長くなるから指摘しねーけど……
そんなこんなで、奴に捕まったら逃げらんねえ事百も承知な俺は、二人で会社を出た。
半分だけシャッターを開けた商品倉庫のターミナルを左手に確認して、俺と奴は駅南に向かうべく右へ曲がったのだった。
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