ファインダー越しの想い

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本当に今更ながら、なんであんなお願いをしたのだろうって思う。 アタシの写真を撮ってほしいなんて今までのアタシからしたら絶ッ対に考えられない台詞だった。 はぁ、もう。何ウジウジ悩んでるのよ、こんなのアタシらしくないじゃない。 叫びだしたい気分だった。でも、何を叫びたいのかなんて分からない。こんなの初めてだった。 机の引き出しを開けて、現像した写真を手に取る。 そこにあるものは、みんなの笑顔、笑顔、笑顔。 多くは女の子の物ばかりだけれど、たまに男共のも混じっている。 少し、落ち着いたような気がした。 こんな時でも、こんな場所でも、こんな絶望的な状況でも アタシたちは生きている。 パラパラと一枚ずつ写真を捲っていくアタシの手がある一枚の写真で無意識に止まる。 それは誰かさんが撮ってくれたアタシの写真だった。やっぱり間抜けな顔をしているな。 ほんっと、なんであんなお願いアイツなんかにしたんだろ。 窓の向こう、波の音が微かに聞こえる。 アタシたちが置かれている状況、南国リゾート、コロシアイ、何一つかみ合わない。 それでも生きなくちゃ、生き残って、そして アタシは写真に向かって微笑んだ。
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